こちらの記事はプレミアリーグ昇格組にも関わらず中堅以下のチームを次々に倒し、ビッグ6に対しても引けを取らないシェフィールド・ユナイテッドのサッカーを攻撃編と守備編の2回にわたって分析していきます。
注意!この記事は個人的見解によるものです。
目次
シェフィールド・ユナイテッド分析
フォーメーション
格上だろうと、格下だろうと、どんな相手に対しても352のフォーメーションを形成します。また、監督のクリス・ワイルダーはスタメンに怪我や出場停止の選手がいない限り、FWの2枚以外はメンバーを固定することがほとんどです。なので、相手に合わせた戦術的スタメン変更やシステム変更はあまり見られません。
シェフィールドの選手を見てもらうとわかりますが、ビッグ6に比べて名の知れた一流選手はほとんどいません。「見たけど選手誰一人知らなかった」という人の方が多いと思います。それもそのはず、シェフィールドは昨季まで2部にいて、12年ぶりにプレミアリーグに復帰したので知らなくても無理もありません。
選手の特徴
GK ヘンダーソン | 反応が早い、現代型の攻撃的GKではない |
CB オコネル | 運動量が豊富、クロスボールや長短のパスの精度が高い、空中戦に強い、ポジショニング良い |
CB イーガン | 1対1に強い、カバーリングが良い、危機察知の能力が高い、ポジショニングが良い |
CB ベイシャム | 運動量が豊富、クロスボールの精度が高い、脅威のスプリント、ポジショニングが良い |
WB スティーブンス | 運動量が豊富、クロスボールとパスの精度が高い、ポジショニングが良い |
WB バルドック | 運動量が豊富、クロスボールとパスの精度が高い、ポジショニングが良い |
DMF ノーウッド | 長短のパスの精度が高い、ミドルシューター、ポジショニングが良い |
CMF フレック | 運動量が豊富、長短のパスの精度が高い、ミドルシューター、フリーキッカー、ポジショニングが良い |
CMF ランドストラム | 運動量が豊富、アーリークロスと長短のパスの精度が高い、ポジショニングが良い |
CF リス・ムセ | 当たり負けしない体、スピードがある、足元のスキルが高い、ビルドアップに参加、ポジショニングが良い |
CF マクゴードリック | 当たり負けしない体、シュート技術が高い、ビルドアップに参加、ポジショニングが良い |
攻撃時の戦術
- ポイント1 サイドを攻略
- ポイント2 三角形を維持
- ポイント3 CBの攻撃参加
- ポイント4 スペースの活用
チームの規律
ビルドアップの時は基本シェフィールドはサイドを重点に数的優位を生み出して攻撃します。その際、サイドでは常に下の図のように誰かがボールを持った時、その選手をサポートできるように常に三角形を保ち、パスコースを確保します。また、選手たちのポジショニングは流動的で、三角形を崩さずに選手たちは常にお互いポジションを変えながら、相手の守備を混乱させてサイドを攻略していきます。
オーバーラッピング・センターバック
ボールが左側にあって上の図の青い三角形でパス回しが行われている、かつ前方にスペース(スティーブンスの前方、リス・ムセの左側)がある場合、シェフィールドはDFを一枚削ってCBが攻撃に参加します。
ここで出てくるのがシェフィールドのオーバーラッピング・センターバックです。この戦術はサポーターが歌うチャントからどんな戦術か読み取ることができます。
「We are SHEFF UNITED (俺たちシェフィールド・ユナイテッド)
They call us the Bladse (ザ・ブレイズって呼ばれている)
We got Billy Sharp (俺達にはビリー・シャープがいる)
He’s a legend at the Lane (ザ・レーンの英雄さ)
Basham and O’Connell (ベイシャムとオコネルが)
Overlapping down the wing (ウィンガーをオーバーラップして)
Duffy,Fleck and Norwood (ダフィー、フレック、そしてノーウッドの)
With his f××king ping (ピンポイントパスで攻撃するんだ)
Allez,Allez,Allez (アレ、アレ、アレー)」
オーバーラッピング・センターバックについて、こちらで詳しく解説しています☞シェフィールドUの戦術オーバーラッピング・センターバックとは?
前方にスペースがない場合
相手はもちろんシェフィールドのサイド攻撃を防ごうと対策してきます。下の図は相手が442で守っている図です。相手はスペースが生まれないようにコンパクトで守備をしているため、シェフィールドが使いたい前方のスペースはありません。
この状況でキーマンとなるのが2CBのオコネルとベイシャム、WBのバルドックです。左サイドで行き詰った時、下の図のように一度オコネルまでボールを下げます。すると、相手はボール保持者にプレッシャーをかけに行き、後ろの選手もそれを見てラインを押し上げます。その瞬間、シェフィールドの前方に攻撃に使いたいスペースが生まれることになります。
そして、ボールを受けたオコネルが次に狙うのはスティーブンスの前方のスペースではなく、逆サイドのタッチライン際でポジションを取っているバルドックです。キックの精度が高いオコネルから一発で逆サイドまでロングパスを通すことによって、広大なスペースを使い攻めることが可能となります。ここで相手のスライドが遅ければ、ボールを受けたバルドックがそのまま持ち上がってチャンスを作ることができますし、もし相手の左SBの寄せが早ければバルドックがタメを作ってオーバーラップしてくるベイシャムを活かし数的優位を作り出すこともできます。
クロスボール
クロスをあげるにしてもシェフィールドの前線には特別身長が高い選手やヘッダーがいないため、CBから蹴られるクロスの種類としてはグラウンダーがほとんどです。
CBからのクロスを防ごうと相手の守備意識はよりCBに向きます。そのため、味方CBからのあがりを利用し、マークが薄れるフレックやランドストラムがハーフスペースから高速アーリークロスを中に入れたりもします。
ゴールキック
GKのヘンダーソンはセービング能力は非常に高いものを持っていますが、マンチェスター・シティのエデルソンやバルセロナのテア・シュテーゲンのようなパス能力を兼ね備えている選手ではありません。
ゴールキックはCBにボールを預けて後方から組み立てていくことはなく、基本的に競り合いに強くボールを収めることができる前線のリス・ムセやマクゴードリックを目掛けてロングキックを蹴ることがほとんどです。
データで特徴を見てみる
この図はプレミアリーグ第21節が終わり、今シーズンこれまで1試合平均でどれだけのクロスボールとロングボールを使ったのかというデータになります。赤枠で囲われたシェフィールドの平均クロスボール数は22回でリーグ4番目、ロングボール数は76回でリーグトップの数字となっています。
この図はピッチの左、中央、右のどのエリアでボールを保持しているかをパーセンテージで表したものです。シェフィールドの行を見て頂くと、中央よりもサイドの方が割合が高いことが分かります。
これらのデータからシェフィールドのサッカーがどれだけの数のサイドからの攻撃だったり、サイドチェンジでロングパスを試合中に行っているのか分かると思います。
まとめ
シェフィールドは三角形を維持し、ショートパスで相手をいなしながら前方のスペースを見つけ、そのスペースをCBがオーバーラップで突いたり、スペースがなければサイドチェンジを使い、逆サイドでもう一度攻撃を組み立てるといったことを何度も試合中に繰り返し行っています。
以上で攻撃編は終わりです。