今季プレミアリーグの昇格組シェフィールド・ユナイテッドが見せている、センターバック(CB)がオーバーラップする斬新な戦術、”オーバーラッピング・センターバック”を分かりやすく説明していこうと思います。
そもそも、CBの自体の役割は最終ラインにずっしりと壁を作り、相手からの攻撃を阻むことが基本的な仕事です。たとえ攻撃に参加するとしても最終ラインでビルドアップの助けになるか、前線にロングパスを供給するか、ディフェンダーとして鍛えられた体を攻撃に活かすためにセットプレーに加わるかですよね。
”オーバーラップ=サイドバック(SB)が行う”というイメージがあるので、CBがオーバーラップするなんて聞いたことがある人はほとんどいないと思います。
従来のCBのポジショニングを放棄してまでCBが前線に上がる必要性は何なのか、どんな動き方をするのかこれから簡単に解説していきます。
目次
オーバーラッピング・センターバックとは?
キーワードは『3バック』
- オーバーラッピング・センターバックとはチームが3バックの形成を前提とし、左右のCBがウイングバック(WB)を追い越すことを言います。シェフィールド・ユナイテッドのクリス・ワイルダー監督がこのシステムを駆使し、2018/19シーズンはペップやクロップを抑えて「リーグ監督協会」の年間最優秀監督に選ばれました。
シェフィールド・ユナイテッドの基本フォーメーションは352。相手は433とします。
オーバーラップをするCBは左のオコネルとベイシャムになります。2人は190センチの大型CBでありながら、キックのバリエーションが豊富で精度の高いボールを蹴ることができます。
★ちなみにこのシステムはキック精度の高いCBが左右にいることが大前提となります。
シェフィールド・ユナイテッド選手一覧はこちらの記事(シェフィールド・ユナイテッド19/20選手一覧)から見れます!
動き方
- 下の図はシェフィールドが相手陣地に攻め込んでいる図です。左WBのスティーブンスかMFのフレックがボールを保持していることにします。相手の守備はマンマークのため、相手のゴールまで進むことは簡単ではありません。なのでフリーマンを作る必要があります。そこで登場するのがオコネルです。オコネルはスティーブンスとフレックの前にスペース(相手のサイドバックの裏のスペース)があることを認識し、タイミングを計ってトップスピードでスティーブンスを外側から追いこします。
- スティーブンスとフレックはパス交換をしながらボールを保持し、できるだけ相手を引き付ける必要があります。同時にオコネルが上がってくることも確認しとかなければなりません。
- オコネルがスペースに侵入しボールを受けことに成功すれば、サイドで数的優位を作ることができ、厚みのある攻撃が可能となります。あとは武器である高精度のクロスをピンポイントに味方に合わせることができればゴールの可能性が一気に生まれることになります。(ボールが逆サイドにあっても動き方は同じです)
オーバーラッピング・センターバックのデメリット
攻撃に人数をかけることができるメリットがある一方、デメリットも存在します。それはオコネルがオーバーラップで空けたスペースを相手に狙われ、カウンターを受ける可能性があることです。相手からするとボール奪取ができたとき、まず空いているスペースを狙ってきます。
対策は?
それを阻止するために、残りのCBとDMFのノーウッドがスペースを埋めなければなりません。シェフィールド・ユナイテッドの場合、もし、相手の右WGにボールが渡ってしまったら、できるだけボール保持者に前を向かせないために素早く中央のCBイーガンが左にスライドし、イガーンが空けたスペースをノーウッドが埋めに行く動きをします。そうすることで、相手のカウンターを軽減することができます。
オーバーラッピング・センターバックを行うには通常のCBよりも〇〇〇が重要!
CBに求められる能力は…
- スプリント能力や運動量:攻撃時に最終ラインから前線までオーバーラップする時や、途中でボールを相手に奪われた時の守備への切り替え時に求められます。上下運動の幅が大きいのでかなりの運動量が必要です。
- 動き出すタイミング:動き出しが遅ければ数的優位が作れなくなったりスペースが消えてしまったり、速すぎるとオフサイドにかかったりカウンターのリスクは大きくなります。そのため、オーバーラップを成功させるには適切なタイミングが必要となってきます。
- クロスの精度:たとえオーバーラップに成功しても、クロスの精度がなければゴールに直接結びつけることは難しくなります。オーバーラッピング・センターバックの戦術はCBにキックの技術があってこそ効果が生まれるので、非常に重要な能力です。
- リスク管理:CBの1枚が前線に上がるため、後ろにスペースが生まれてしまいます。もちろん相手はそのスペースをチャンスと見なし攻撃の的としてきます。なので、残されたCBは空いたスペースを埋めなければなりません。